PETがん検診

2005年度FDG-がん検診アンケート調査の結果報告(概要)

はじめに

日本核医学会と臨床PET推進会議は、FDG-PETがん検診の質の向上を目的として、2004年に「FDG-PETがん検診ガイドライン」を発表している。このガイドラインでは、FDG-PETがん検診を行う施設は、精度管理のためにその実績を定期的に報告することが求められている。ここにまとめたデータは2005年度(2005年4月から2006年3月まで)に実施されたFDG-PETがん検診検査に関して、臨床PET推進会議PET検診分科会が中心となって行った全国調査を集計した概要で、詳細は別途論文に発表する予定である。

なお、FDG-PETがん検診とは、FDG-PET(PET/CTを含む)による健常者を対象とするがんのスクリーニング検査で他の検査を併用する場合を含む。

アンケート回答数、受診件数、精査率

調査当時FDG-PET検査を行っていた99施設中、調査に回答したのは68施設(回収率68.7%)であった(別表1)。そのうち「FDG-PETがん検診」を行った施設は46施設であり、総受診件数は50,558件(男性27,862件 女性20,740件 不明1,956件)であった。

今回の調査では、要精査者の追跡に重点を置き、全要精査者に対する精査結果の回答を求めた。精査結果は上記46施設中、調査が不十分な8施設を除く38施設で集計(精査結果回収率:43.7%)されていたので、以下に述べる発見率や陽性率などの解析はこれらの施設を対象とした。

その38施設の受診件数は、43,996件(男性25,193件 女性18,803件)であった。受診者の年代分布は50、60代に多く、全体の約61%を占めていた。総受診件数の検査機器別内訳は、PET専用機 32,970件、PET/CT装置17,588件であった。

総合判定での要精査例は受診者の9.8%(PET専用機:9.0%、PET/CT装置:11.0%)であった。なお、「要精査」とは、PETと併用検査を含めた総合判定でがんが疑われて精密検査を勧めた例をいい、併用検査として別表2にあげる検査が実施されていた。

FDG-PET検査方法に関する集計結果

撮像機器は74台で、PET専用機は35台、PET/CT装置は39台である。FDGの投与量は、一定である施設が7施設(平均200.1 MBq)、可変とする施設が37施設(平均222.0 MBq)であった。撮像部位は、PET、PET/CTにかかわらず大多数の施設が「頭頂部-大腿部」を選択していた。Delay scanは、6施設で常時実施し、27施設では必要に応じて実施、11施設では実施していなかった。Delay scanの開始時刻(FDG投与後)は120分を選択する施設が大多数であった(平均120.5分)。

発見されたがんの集計結果

発見されたがんは合計500件で、受診者の1.14%(FDG-PET所見陽性 0.90%、陰性0.24%)であり、FDG-PET所見陽性は79.0%であった(別表3)。PET陽性率は併用検査に大きく依存するため、いわば相対的感度ではあるが、発見例の多かったがん、すなわちそのPET感度の高いものとして、甲状腺癌(発見数107件、PET陽性率88%)、大腸癌(102件、90%)、肺癌(79件、80%)、乳癌(35件、92%)が、PET感度の低いものとしては前立腺癌(47件、45%)、胃癌(30件、30%)があげられた。

精査票の回答が得られた38施設のうち、偏りも少なく信頼性も高いと思われる、「FDG-PETがん検診年間実施件数300件以上」、「精査結果判明精査票回収率50%以上」の14施設(FDG-PETがん検診実施件数16406件、要精査件数1430件、要精査率8.7%、精査票回収率70.8%)では、がん発見数は185件で、受診件数に対する発見率は1.13%(FDG-PET陽性0.81%、陰性0.32%)であった。

考察

「FDG-PETがん検診ガイドライン」では、各PET検査実施施設は、件数などの集計とがん発見例の詳細について定期的に報告することとなっている。今回は要精査者(検診陽性者)の追跡に重点を置き、要精査例すべての精査結果の報告を求めたが、精査を行った医療機関が異なる場合にその情報を得るには多大な労力を要し、また精査を受けない受診者もいるため、精査結果の回収は要精査者の半数程度となった。しかし、このような大規模の全国調査は初めてであり、PETがん検診の実態と成績を明らかにすることができた意義は大きい。また、各PET施設にとっても、この調査が検診の精度管理とさらなる質の向上への契機となるものと考える。

PETがん検診の真の「感度」を明らかにするためには要精査にならなかった受診者(検診陰性者)の追跡が必要であり、またがん検診の真の有効性を実証するには検診受診群と非受診群の比較追跡が必要である。しかし、これらを全国規模で行うことは実際問題として不可能で、限られた施設で対象者を限定して試みられているのが現状である。今回の調査はこれら対象を限定した研究の結果を一般化してゆく上でも役立つと考えられる。

最後に、アンケートに協力いただいた、多数の医療機関の方々に感謝申し上げる。


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