PETがん検診

2008年度FDG-PETがん検診アンケート調査の結果報告(概要)

はじめに

日本核医学会と臨床PET推進会議は、FDG-PETがん検診の質の向上を目的として、2007年に「FDG-PETがん検診ガイドライン2007」を発表した。このガイドラインでは、FDG-PETがん検診を行う施設は、精度管理のためにその実績を定期的に報告することが求められている。ここにまとめたデータは2008年度(2008年4月から2009年3月まで)に日本国内で実施されたFDG-PET がん検診検査に関して、臨床PET推進会議PET検診分科会、日本核医学会PET核医学分科会PET がん検診の疫学調査WG、厚生労働省がん研究助成金(寺内班)、横浜市立大学FDG-PET がん検診の疫学調査研究班が合同で行った全国調査を集計した概要である。本アンケートの集計作業は、日本アイソトープ協会の全面的な協力のもとに行われた。

なお、FDG-PETがん検診とは、FDG-PET(PET/CTを含む)による健常者を対象とするがんのスクリーニング検査で他の検査を併用する場合を含む。

アンケート回答数、受診件数、精査率

調査当時FDG-PET検査を行っていた163施設中、調査に回答したのは64施設(回収率39.3%)であった。そのうち「FDG-PETがん検診」を行った施設は61施設(別表1)であり、総受診件数は43,253件(男性25,539件 女性17,070件 不明644件)であった。受診者の年代分布は50、60代に多く、全体の約65%を占めていた。総受診件数の検査機器別内訳は、PET専用機 14,841件、PET/CT装置28,412件であった。

全要精査者に対する精査結果の回答を求めた。精査結果は上記61施設中、調査が不十分な3施設を除く58施設で集計(精査結果回収率:38.6%)されていたので、以下に述べる発見率や陽性率などの解析はこれらの施設を対象とした。その58施設の受診件数は、38,929件(男性23,055件 女性15,230件 不明644件)であり、受診件数の検査機器別内訳は、PET専用機 12,037件、PET/CT装置26,892件であった。経年受診率は約30%であった。総合判定での要精査例は受診者の11.6%(PET専用機: 10.8%、PET/CT装置:12.0%)であった。なお、「要精査」とは、PETと併用検査を含めた総合判定でがんが疑われて精密検査を勧めた例をいい、61設中、52施設は何らかの併用検査を行っていたが、併用検査として別表2にあげる検査が実施されていた。

FDG-PET検査方法に関する集計結果

撮像機器は109台で、PET専用機は27台、PET/CT装置は82台である。FDGの投与量は、一定である施設が20施設(平均179.8 MBq)、可変とする施設が41施設(平均211.8 MBq)であった。撮像部位は、PET、PET/CTにかかわらず大多数の施設が「頭頂部-大腿部」を選択していた。Delay scanは、14施設で常時実施し、35施設では必要に応じて実施、12施設では実施していなかった。Delay scanの開始時刻(FDG投与後)は120分を選択する施設が大多数であった。

発見されたがんの集計結果

発見されたがんは合計496件で、受診者の1.27%(FDG-PET所見陽性0.98%、陰性0.30%)であり、FDG-PET陽性率は76.6%であった(別表3)。ただしPET陽性率は併用検査に大きく依存するため、いわば相対的感度である。要精査例においてFDG-PETによって疑われたものは60.8%であった。またFDG-PETの陽性的中率は34.6%であった。発見例の多かったがんは、PET陽性率が高かったものとしては、大腸癌(発見数97件、PET陽性率84%)、肺癌(87件、94%)、甲状腺癌(78件、90%)、乳癌(48件、88%)が、PET陽性率の低いものとしては胃癌(38件、18%)、前立腺癌(36件、31%)があげられた。

考察

「FDG-PETがん検診ガイドライン」では、各PET検査実施施設は、件数などの集計とがん発見例の詳細について定期的に報告することとなっている。アンケート調査は今回で4回目となり、多数の施設の協力のもとに計約18万件に関する検診データが蓄積した。本調査は要精査者(検診陽性者)の追跡に重点を置き、要精査例すべての精査結果の報告を求めているが、精査結果回答施設のほとんどから、非常に詳細な情報提供を得ることができた。しかし、各検診施設がその情報を得るために多大な労力を要していることは毎回問題としてあげられており、各施設の情報収集を少しでも容易にすることを目的に、昨年度より精査機関が精査結果について記入可能な回答用紙をアンケート依頼とともに配布した。

受診件数は前年度とほぼ同等であると予想されるが、経年受診率には上昇が認められた。これは、PETがん検診受診経験者による本検診への信頼度と満足度の向上によるものであることを期待したい。一方、今後は推奨されるPET検診の受診間隔についても十分検討していく必要がある。

FDG-PETがん検診に使用する装置としては、PET/CT装置がますます優位になっており、新規参入施設、PET/CT装置の買い替えなどが要因であると考える。

発見されたがんは全体の1.27%と前年度と同等であり、PETが陽性であった割合や発見されたがんの傾向は前年度調査と同等であった。この検診において、悪性リンパ腫や腎がん、膵がんなど特定のスクリーニングプログラムが存在しない癌腫が発見されていることは本検診の最大の特徴であり、今後併用検査の選別によりさらに精度が向上する可能性もある。しかし、併用検査それぞれにも精度が求められ、様々な専門領域の識者との協議もまた必要である。

最後に、アンケートに協力いただいた、多数の医療機関の方々に感謝申し上げる。


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