PETがん検診と線虫検査に関する多施設調査
PET核医学分科会の先生方、ならびに一般の方々へ
2024年10月3日
PETがん検診と線虫検査に関する多施設調査チーム
長町 茂樹 福岡大学放射線医学教室
陣之内正史 厚地記念クリニック
田代 城主 福岡和白PET画像診断クリニック
藤田 晴吾 宮崎鶴田記念クリニック
水谷 陽一 西の京病院PETセンター
川本 雅美 湘南鎌倉総合病院先端医療センター(PETがん検診WG代表)
佐藤 葉子 山梨PET画像診断クリニック
西尾 正美 名古屋放射線診断クリニック
PET/CT検診に携われる先生方へ
昨年10月に全国PET施設に対して行いました「PETがん検診と線虫検査に関する多施設調査」をまとめた論文が臨床核医学9月号に掲載されましたので、お知らせいたします。https://www.rinshokaku.com/magazines/2024/57_5.pdf
この度のアンケート調査にご協力下さいましたPET/CT施設の関係者の方々に改めて深謝申し上げます。
論文要旨は以下の通りです。
株式会社HIROTSUバイオサイエンス(以下HIROTSU社)が販売している線虫検査のN-NOSEリスク判定法は、がんのリスクを判定するもので、がんのスクリーニング検査には該当しないと考えられます。しかしN-NOSEリスク判定法で高リスクと判定されたことで、御自身が、がんに罹患しているのではないかと心配される方が多数おられることから、全国のPET/CT施設の先生方にご協力いただき、線虫検査契機に受診された場合のがんの発見率をPET/CT検診の立場から求めました。その結果、N-NOSEで高リスクと判定されても、がんが見つかる頻度は2%程度で、N-NOSEが対象としている15種のがんに限ると1%以下でした。
本論文は、N-NOSEリスク判定法の精度を検証したものではありませんが、少なくとも高リスクを陽性とした場合は偽陽性が多い結果でした。PET/CT検診に携われる先生方が、検診現場で線虫検査を契機に受診された方へ検診結果を説明される際に、ご参照いただければ幸いです。
一般の方々へ
最近、HIROTSU社のHPに、我々の発表を引用し次のようなプレスリリースがなされています。
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『日本核医学会PET核医学分科会PETがん検診ワーキンググループによる調査結果に基づく試算から、N-NOSE高リスク者の「真の」陽性的中率は11.7%であり、一次スクリーニングとしてのN-NOSEが有用であることを報告。』
「N-NOSE」は新時代へ―「N-NOSE」の有効性、実社会データで確定、論争に終止符―
『同年9月1日、第三者(日本核医学会PET核医学分科会PETがん検診ワーキンググループ)による実社会データの報告により、「N-NOSE」の実社会における感度が非常に高いことがブラインド試験により証明されました。
(中略)
今回の学会では、PET-CTを推進する医師の方々が、100を超える病院のデータを取得し、解析し、発表してくださいました。そのご尽力と、データを正しく公表されたことに厚く御礼申し上げます。その第三者機関による発表結果は、「N-NOSE」の陽性的中率が既存検査よりも圧倒的に高く、「N-NOSE」は世の中で使っても高精度であるというものでした。
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私どもとHIROTSU社との間には全く協力関係はありません。HIROTSU社のHPに書かれている記事の内容は一切承知しておりません。特に、これらの記事について、私どもの調査結果と齟齬がある項目を列挙し補足説明致します。
1. 我々の調査結果では、N-NOSEで高リスクと判定されてもPET/CT検査を含めた検診でがんが見つかる頻度は2%程度であり、N-NOSEが対象としている15種のがんに限ると1%以下です。従って①のような「一次スクリーニングとしてのN-NOSEが有用である」根拠はなく、逆に大部分の方は偽陽性です
2. 「真の」陽性的中率を11.7%と試算されていますが、我々のデータからこの数値を求めることはできず、我々の論文にもその数値はありません。実測したものではなく仮想の数値と考えます。N-NOSEの真の感度・特異度、真の陽性適中率を求めるには、多数の健常者集団を対象としたコホート研究(前向きの追跡調査)が必須になりますが、これまでそのような検証の報告はありません。我々の調査もそうした研究には該当しません。また、「ブラインド試験」ではなく、「感度が非常に高いこと」の根拠もありません。従って、『「N-NOSE」の陽性的中率が既存検査よりも圧倒的に高く、「N-NOSE」は世の中で使っても高精度である』と結論出来るような調査結果ではありません。
本HPをご覧になった方は、これらの点にご留意の上、リンク先の臨床核医学9月号の論文の調査結果と考察をお読み頂ければ幸いです。N-NOSEで高リスクと判定され、他の検診を受診される際に、過剰な心配は、必要でない場合が多いことをご承知おきください。また、逆に低リスクと判定されても安心せず、5大がん検診や人間ドック、その他がん検診を定期的に受けられることをお勧めします。